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2015年2月22日 (日)

床下エアコンと上下間温度差

「床下エアコン」ブログその2です。

当ブログで2月12日に床下エアコンの事をかいた翌日13日の[日経新聞]に、「冬も快適な家、秘密は高断熱の窓と床下エアコン」の見出しの記事が掲載されていました。

筆者のM氏の記事について、あまりにも実態とかけ離れた記述と偏り、M氏と私の断熱に対する考え方の違いについて、私なりの考え方を書いてみたいと思います。

断熱の方法について先ず、第3種換気を第1種換気に改める。次に住宅の断熱性能向上の方法について、①アルミ枠シングル硝子(U値:4.65W/㎡K)を樹脂枠の複合硝子サッシ(U値:1.7W/㎡K)に向上させる「窓強化型」と、②100㎜のグラスウールを180㎜に向上させる「断熱材強化型」の二つを例に、どちらを優先させるべきかを施工コストを示して優先順(優位順)を述べられています。

最初の3種換気から1種換気に改めるのは私も賛成です。

次の「窓強化」と「断熱材強化」の記述について、「窓強化」をした場合、120㎡程度の標準的な建物の場合30万円程度のコストアップがある。しかし「窓強化」した場合と同じ程度のUA値(Q値でも考えても基本的には同じ)を保つためには100㎜厚さのグラスウールを180㎜に強化する必要があり、そのためには「窓強化」30万円の3倍のコストがアップ(90万円)するので、窓強化を選択する方が有利だと書かれています。熱の計算式は正しいのですが、問題は施工コストです。

要は同じ断熱性能を得るために「窓の強化」だと30万円ですむが、「断熱材の強化」だと3倍の90万円も掛かるという意味です。これを読む限り読者は、壁の断熱は差し置いても窓の断熱を優先しようと考えるのが普通です。

もし、これが逆ならどうでしょうか。
樹脂製複合サッシへのコストアップ30万円は建築業者の仕入れコストに幾分の差はあれまあ世間相場はこんなものだとしましょう。
ただ、どう考えても納得いかないのは100㎜のグラスウールを180㎜に増量した場合、90万円も余計に掛かるというところです。

因みにグラスウール100㎜の相場は大なり小なりせいぜい400円/㎡程度ではないかと思います。それを30坪の標準的家屋の壁・天井に施工する場合、断熱材面積に換算すると平均的には200㎡程度でしょう。つまり100㎜を200㎜に強化しても、差額の400円/㎡×200㎡=80.00円しか増えません。

つまり、同程度の断熱性能を得るためには、「窓強化」を選択すると「断熱材強化」の≒3.8倍のコストが掛かるという、M氏の試算とは全く逆の結果になるのです。

だからと言って、私はグラスウールが賢い選択だと言っている訳ではありません。
確かにグラスウール(壁体内断熱工法)は安いですが、それなりに大きな欠点とリスクを持っています。
先ず、熱伝導率が低いこと。(グラスウール24K:0.038W/K)、次に室内側を完全な気密シートで施工しなければ、内部に水蒸気が入り込み内部結露を発生させ、ひいてはそれが原因でカビを発生させ、結果ダニの発生につながる可能性が多々あること。
また、カビの発生だけでなく木材に腐朽菌の発生も考えられ、建物の寿命を縮めることにもなること。
言うまでもありませんが、内部結露は断熱性能そのもの劣化にもなります。室内側の完全な気密を保持する施工は実際はなかなか難しく、どうしてもリスクがあります。

ならどうするか、物理的に熱伝導率が小さく。吸水率の小さな断熱材素材を建物躯体の外側に施工(外断熱)すれば良いのです。そうすれば上記のリスクはなくなります。

但し大きな欠点(?)が一つあります。それは素材の価格です。
因みに180㎜のグラスウールと同じ熱抵抗値を持つ高性能フェノールフォーム保温板(0.019W/K 厚さ90mm )の場合だと3700円/㎡(グラスウールの4.6倍の価格)もすることです。それにしてもグラスウール100㎜を180㎜にアップするのと同等の性能をフェノール板でアップすると差額は1900円/㎡×200㎡=380.000円アップしますがとても90万円にはなりません。
「窓強化」より8万円程度のアップなら、建物本体に対するリスクを考慮すると選択肢の範囲に入るのではと思います。

ところで私なら、私ならどちらか一つではなく、冬季夏季の快適さと省エネ、また家の寿命を考えると「窓強化」、「断熱材強化」の「両方を満たす選択が正しい」と書きます。

読者の中には差額の30万円は大きいとお考えの方も多数おられるとは思います。
でも窓や壁・屋根の断熱施工は新築の時にしかできません。この性能住宅は家の寿命がある限りついて回ります。将来リフォームしてもなかなか所期の性能にはなりません。
30万円は大金といえば大金ですが、あとでどうとでもなる部分や車などは極力始末してでもこの30万円をひねり出すことをお勧めします。何十年の時間・期間があれば30万円の節約は充分に可能ではないでしょうか。
35年の長期ローンを組んで返済する住宅という高額な買い物をするにあたって、中途半端な断熱性能の住宅を購入する。長期にわたり住み続けることを思うと、なんだかつらい気がします。

一生過ごさなければならない住宅を快適にするためのこの投資は高いでしょうか。

次に、M氏の床下エアコンについての記述です。
氏は床下エアコンの有用性について、建物の熱損失係数Q値が1.9W/K㎡、隙間相当面積C値が1.0㎠/㎡の住宅を前提とし、その場合に部屋内の上下温度差が3~4℃発生するとの想定で、床下エアコンによる「1階床面の暖め効果」を述べられています。

また、前回私が書いていたエネルギーのロス大きさについて、M氏は床下エアコンで暖房時に逃げる熱量は多くても9W/㎡と書かれています。

理由は晴れの日の日の出から日没まではエアコンをかけていないからと言われています。
でもその時の外気温度がいくらで、各階の各室内温度の各部位の温度が何度なのかの各データーがなにも書かれていないので、唐突に「9W」しか逃げないと言われてもどんな計算式によるものなのかわかりません。エアコンをかけなければエネルギーのロスがないのは当然です。但し、その状態が快適なのかどうか判りません。状況を理解するためにはやはり客観的なデータもしくは、[9W/㎡」の算出根拠になる計算式が必要です。計算式がないのでどうして「9」という値が出てきたのか解りません。
いずれにしても、快適さを感じる温度は個人によって大きく異なるので、データーが必要です。

因みに、私が前回のブログで簡単に計算した損失数値は、単純計算ではありますが1.68KW/㎡Kです。
この数値は前提条件が異なれば、当然異なりますが、いずれにしても「9W」とは次元が違うほどの違いです。熱は高い方から低い方へ流れるという物理の法則にしたがえば、冬の地面や床下のコンクリート面の温度が室内温度と同程度ではない限り、熱は計算通り正直にコンクリート面を通して地面に逃げて行きます。(当モデルハウスでの熱電対による、床下コンクリート表面の測定結果は一番高いところでも16℃です。平均は13℃程度)

また、床下エアコンの施工条件として、Q値が1.9は必要と書かれています。1.9以上がダメなら、1.9以下ならどういうことになるのかの検証記事はありません。

前回にも書きましたが、以下はモコハウスでの計測結果です。(モコハウスでは四季を通して各室各階の連続データーを取っています。)

下の写真は2月15日のモデルハウス(Q値0.69)での表面温度測定風景です。

*写真はクリックすると拡大します。

Photo_2

1階床面表面温度23.1℃

2

同じ場所での屋根面表面温度23.7℃

Photo_3
2階床面表面温度23.7℃

Photo_4

以上写真のように、モコハウスモデル住宅では上下間の温度差は1~2℃内外にとどまっています。
また床の表面温度もそれぞれ床下エアコンや床暖房などなくても、1階23.1℃、2階23.7℃と床暖房並みの温度を保っています。因みに、室内温度も各部でほぼ同じ、屋根面温度も23.7℃と1階床面と比較しても0.6℃しかありません。

要するに、住宅の熱損失係数を1.0W/㎡K程度まで下げると、地面に熱を奪われることを承知で敢えて床下にエアコンを設置しなくても、室内の空調機だけで床面の温度が上がってくることが実証されています。

上記、測定当日の同時間における外気温度は6℃程度です。因みに外気温度が0℃まで下がっても室内温度はあまり変わりません。1階床と屋根面(天井面)の温度差が1℃内外に収まるなんて、実生活の体験からは信じられないかもしれませんが、これはマジックではなく事実です。

つまり断熱スペックを上げていくほど、当然といえば当然ですが上下間の温度差は小さくなっていきます。Q値と建物内部の上下間の温度差の相関関係は興味深いものがあります。
モデルハウスでの温度測定は理論の検証結果です。(理論と実際の差を検証することが必要です。ぜひ一度ご来場の上ご確認ください。

このように住宅自体の性能を向上させると、余分なエネルギーのロスもなく、快適な空気環境を得ることができるのです。

中途半端な断熱性能の住宅の床を熱ロスしながら暖めるといったような、小手先のアイデアで快適さのつじつまを合わせるのではなく、私がいつも言っているように、基本に忠実に正々堂々と熱に立ち向かっていくことが、良い住宅づくりの原点であると私は確信しています。

最初に、基本性能さえしっかり作り込んでおけば、いついかなる空調システムが出現しても常に一番有利にそれらを採用し利用できるのです。

*以下、参考までに、本記事の測定日ではありませんが外気温度と1・2階の室内温度の変化のグラフを添付しておきます。

12141227302

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